2009年3月25日水曜日
和鋼・和銑
いい加減に疑似科学的な「たたら研究」はあきらめて,本筋に戻ろうとしたら,「たらら」を科学化しようとしている(しかも公開されている)雑誌を見つけてしまいました.
それは「鉄と鋼」という雑誌です.
日本鉄鋼協会の会報誌です.メンバーはどちらかというと,技術者が多いようですが,もちろん近代科学で鍛えた人たちですので,非常にわかりやすい論文になっています.
現在たたら関係の記事を集めて読解中.
原材料の「砂鉄と地質」についての記事は,さすがに無いようですが,「たたら製鉄」自体についての科学的解釈はすばらしく,大変に良くわかります.
これについては,また別の機会に.
「たたら製鉄」実験が何度となくおこなわれ,その方法,経緯,結果が分析値をまじえて解釈されており,前記・疑似科学的「たたら」本のように「たたらはすばらしい」・「たたらはすばらしい」・「たたらはすばらしい」…ではなく,冷徹に現象が報告されています.
そこで,ふと気がついたこと.
たたら製鉄でできてくる「鉧」.その中でも良質な「玉鋼」は,我々が普通に思い浮かべる「鋼」とは違うようです.同時に,「銑」も我々が普通に思い浮かべる「銑鉄」とはこれまた違うようです.
日本学士院日本科学史刊行会(1958編)「明治前日本鉱業技術発達史(1982,復刻版)」に,現在では炭素の含有量によって「鋼鉄」・「銑鉄」と区別しているが,「当時の冶金技術によってつくられた銑および鋼は,これらの性質とは若干違っている」続けて「それらと一応区別するために,『和銑』および『和鋼』と呼ぶ方が正しいと思われる」としています.具体的に何が「違っている」のか,は明記してありませんので,これを以前に読んだときには何のことだかわからなかったのですが,実験例をみると,なるほど,「『和銑』および『和鋼』と呼ぶ方が正しい」ような気がしてきます.
まだ,ちゃんと説明はできませんが….
もひとつ,西洋式の製鉄は「鉄を造る」のですが,日本式の「たたら製鉄」では鉄は「鐵に成る」といった方がいいような気がしてきました.
これも,まだちゃんと説明はできませんが….
村下(「たたら製鉄」のチーフのこと)は「鐵に成る」ように条件を揃えてあげるのですが,「鐵」になるか,「銑」になるか,「鉧」になるかは,本当のところ,鉄次第のようです.
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2 件のコメント:
私は日本刀の地鉄(特に古刀期)を知る為に中世たたら製鉄を調べている市井の素人です。このブログを拝見しまして目の覚める思いが致しました。世の中にはかなり曖昧な論稿があるように感じておりましたが、最も基本である地質学よりの考察にはただただ敬服するのみです。大変勉強させて頂きましたことに改めて御礼申し上げます。私も極めて浅学な私見をサイトに掲載しておりますが、勘違い、不勉強な点は是非参考にさせて頂き度く存知ます。又、これから加筆されるのでしょうが、発掘されました鐵鋼協会の「鉄と鋼」の巻・号数がお判りでしたら早めに公開して頂くと有り難く存知ます。今後のご活躍を期待致しております。
お目に留まりまして,光栄です.
元々,「武田斐三郎の熔鉱炉」が失敗したのはなぜか,どうして失敗と見なされているのかが疑問での探索中です.
少し掘込みが深くなりすぎたと反省していますが,この駄文でも参考にしていただける方がいらっしゃるのはうれしい限りです.
今,自分の体の方のメンテナンスが大変で,なかなか思うようになりません.入院中にいろいろ情報を仕入れましたので,整理している最中です.
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