2009年3月27日金曜日

「鉄と鋼」

  
 「鉄と鋼」という雑誌に載った論文を読んでいました.

1998,永田和宏「小型たたら炉による鋼精錬機構」
1999,鈴木卓夫・永田和宏「たたら製鉄(鉧押し法)の復元と村下安部由蔵の技術」
1999,鈴木卓夫・永田和宏「たたら生産物『玉鋼』の性質に及ぼす『籠り砂鉄』使用の影響」
2000,永田和宏・鈴木卓夫「たたら製鉄の炉内反応機構と操業技術」
2000,永田和宏「小型たたら炉による鉧(ケラ)と銑(ズク)の生成機構」
2004,永田和宏「たたら製鉄の発展形態としての銑鉄精錬炉『角炉』の構造」
2004,永田和宏「『角炉』の鉄滓あるいは砂鉄を用いた製鉄反応機構」
2005,片山裕之「江戸時代における奥出雲たたら製鉄の経営の展開」
2005,舘 充「わが国における製鉄技術の歴史―主としてたたらによる砂鉄精錬について―」
2005,羽場睦美「チタン酸化物の溶剤としての反応」
2005,鈴木卓夫「鉄仏の製作年代と古伝書『古今鍛冶備考』からみた銑押し法と鉧押し法の成立期の検討」

 これまで,疑問に思っていたことの大部分が,これらの論文で追求され,ある程度の解答が示されています.
 20世紀も最後の最後になって,ようやく,「たたら製鉄」に科学のメスが本格的に入ってきたということですね.逆にいえば,これ以前にかかれた多くの「たたら本」は不明確なところや不正確なところ,そして曖昧なところ,もっといえば「間違いがある」ということになります.

 上記論文を参考にすれば,もっと正確な「たたら製鉄」についての解説がかけそうな気がします.しかし,これらの論文では,以下の文献がかなり重要な意味を持って引用されています.

俵 国一(1913編)「古来の砂鉄製錬法 : たゝら吹製鐡法」
鈴木卓夫(1990)「たたら製鉄と日本刀の科学」
下原重仲(1784)「鉄山必用記事」
日本鉄鋼協会たたら製鉄復元計画委員会(1971編)「たたら製鉄の復元とその鉧について」
山田浅右衛門(編著)「古今鍛冶備考」
(蛇足:山田浅右衛門って,あの首切り浅右衛門のことですね!)

 これらの文献は,いずれも現在では入手不可能で,北海道では道立図書館にいくつかあるぐらいですか.これらを直接確認しなければ,うかつなことはいえませんね.

 さらにいえば,「鉄と鋼」はいわゆる冶金学者の研究雑誌ですから,地質・鉱床関係の記事はほとんどありません.いってみれば,「たたら製鉄」の基本の基本である,原料「砂鉄」の性状・由来が未開拓ということです.原材料の「砂鉄」および「砂鉄鉱床」に関する記述が曖昧なわけです.


 ということで,上記古典的資料のいくつかの閲覧にチャレンジすることにしました.昨日,最寄りの図書館を通じて「相互貸出」とやらで借りてもらうことにしました.いつになるかはわかりませんが,手元に届いて読み込むまで,本質的なことは棚上げになると思います(「鉄と鋼」掲載論文でわかることについては解説するかもしれません).

 

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