2009年11月17日火曜日

新生代

 
 「新生代」という言葉を和英辞典で引いてみてください.
 大きめの辞典でないとでていないでしょうけど,たぶん「Cenozoic Era」とでていることでしょう.
 どうもこれが,「アヤシイ」言葉らしい.

 断片的な情報をつなぎ合わせると,「Cenozoic」という言葉は,もともとヨーロッパで「Caenozoic」と綴られていた言葉が,その発音が「seenozoic」に近いというので,米国で使われた“俗語”(というか“俗つづり”).
 ところが,ヨーロッパで使われていたという「Caenozoic」は,もともとフィリップス[J. Philliips]が「Cainozoic」として提唱していたにもかかわらず,使われていた,こちらも“俗語”.

 現在では,俗語の俗語のほうが偉そうな顔をして(主たる語として),辞典類に収まっているという次第.
 酷いことに,caen(o)-やcen(o)-には,ギリシャ語の語源がないにもかかわらず,


 フィリップスは,それまで「第一期[Primary]」・「第二期[Secondary]」・「第三期[Tertiary]」として分けられていた「地質時代」を,曖昧であり混乱の元であるとして,すでにセジウイック[Sedgwick]が提唱していた「Palaeozoic Era」にならい,「Palaeozoic Era」・「Mesozoic Era」・「Cainozoic Era」の三つに分けたのでありました.

 「Cainozoic」は,ギリシャ語の「カイノス[καινός]=「新しい.新鮮な」と「ゾーオン [ζῷον] [zoon]」 =「動物,生物」を組み合わせ,「新しい動物」という英語を造り,さらにこれを形容詞化したもの.
 従って,これだけでは「新しい動物の」という意味しかなく,独立した用語ではありません.だから正式には,「Era」とセットで,やっと「Cainozoic Era」=「新しい動物の時代」という意味になる.

 いい加減なのか,特有の性格なのか,現在の英語では,この形容詞が名詞化してしまって,「Cainozoic」だけで「新しい動物の時代」を意味しています.だから,PCで翻訳をかけると「Cainozoic Era」は「新生代時代」と訳されてしまいます.新生代の地層を意味する「Cainozoic System」は「新生代系」などと訳されてしまう.
 困ったモンです.


 話を戻すと,フィリップスが提唱した元々の「Cainozoic」のcain(o)-はギリシャ語語源を持ちますが,俗語のCaenozoicや俗語の俗語であるCenozoicは,もちろんギリシャ語やその直接の子孫であるラテン語の語源を持ちません.
 それなのに,強引にも,これら俗語や俗語の俗語は,現代の辞典ではギリシャ語の語源を持つように書かれているのが普通です.よく見ると,この記述は,まったく整合性がないことに気付きます.

 ごく最近まで,辞典の記述を盲信しながらも,なぜそうなるのかが理解できなかったのですが,やっと「いい加減である」ことに気付き,理解できた次第.

 困ったモンだ.

 

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