蝦夷草紙の上巻 巻之二には「産物の事」という項目がある.
この部分は,須藤十郎編と徳内自筆とされる吉田常吉編とは記述が異なる.
須藤十郎編は「蝦夷国風俗人情之沙汰,一名蝦夷草紙」となっており,山形大学付属博物館の蔵書を底本としているそうだ.
須藤十郎編の「はしがき」によれば,「蝦夷草紙」には,三つの系統があるそうだ.
一つ目は,山形県村山市の高宮家に所蔵されているもので,「行文が最も素朴」なので,徳内の最初の稿本と考えられているそうだ.
二つ目は,「蝦夷風俗人情之沙汰」とされているもので,内容は一つ目とほとんど変わらないものの,字句がかなり訂正されており,徳内の師・本多利明によって加筆されたものと考えられているそうだ.
三つ目が,近藤重蔵ゆかりの永沢家に伝わるもので,徳内自筆といわれているが,附録の一部が欠けているらしい.本文が他の二つとどう異なっているのかは示されていない.
また,この三つの系統が,のちに編纂された“蝦夷草紙”のどれにあたるのかも示されていないが,少なくとも,須藤十郎編は二つ目の系統にあたるようである.
さて,吉田常吉編の「産物の事」の項目(とくに地質・鉱物関連だけ)は
・黄銅・餘糧・碗青・硯石・鍾乳石・石炭・明礬・緑礬・温泉の9項目である.
一方,須藤十郎編の「産物の事」の項目(同上)は
・金山・銀山・銅山・鉄山・鉛山・黄銅・余糧・碗青・硯石・鍾乳石・石炭・明礬・温泉の13項目である.
徳内自筆とされている方が,項目数が少ない.多い分は本多利明の加筆なのだろうか.それとも,徳内自筆とされている本に欠落部があるのだろうか.
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